窓の外は、茜色の空が広がっている。 窓枠に切り取られたオレンジの空に浮かぶ雲も赤い。 差し込む光が部屋の中も、みのりの頬もオレンジに染めていた。 陰は濃く長く、飛んで行く鳥も黒い影に見える夕暮れ時。 扉を開けた咲が見たのは、座り込んで空を見上げるみのりの背中だった。 「みのり、起きたんだ。」 普段なら咲が来たと判ればすぐに飛んでくるのに、みのりは外を眺めたままだった。 振り向かないまま、朧な声が「うん。」と小さく返事をする。 咲は静かに扉を閉めると、みのりのすぐ後ろに膝をついた。 「起きたばっかり?」 言いながら、少し乱れているみのりの髪を手で梳いた。 遊び疲れて寝ていたみのりは、まだ目が覚めきっていないのかされるがままにしている。 みのりからはほんの少しお日様の匂いがした。 「あのね。」 ふ、っとみのりが口を開いた。 咲はその横顔を覗き込む。 幼い瞳には夕焼けの緋色が滲んでいた。 「お空を歩いてる夢を見たの。」 濃い陰影の差し込んだみのりの横顔は、空を仰いでいる。 「でも、目が覚めたら、飛べなくなっちゃった。」 ぼうっとそう呟いたみのりの視線の先を追って、咲は窓の外へと目を向けた。 焦げ付いたような赤い空で、雲が金色に輝いている。 空を渡る風の足音が聞こえてきそうな程になめらかに流れる雲。 「お空を本当に飛べたら、気持ちいいのかな。」 みのりはそう呟くと、咲の手を取ってぎゅっと握った。 一回り小さなその掌を握り返し、咲は夕日を見つめながら頷いた。 「うん、きっと、すっごく気持ちいいよ。」