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太陽の放つ光が、雲を突き抜けて黄金に輝く。
消えていく日差しが広げる空は、淡い水色をしていた。
遠くの方で、子供の帰宅を促す町内放送がこだましていた。
踏み切りの警報が鳴り出し、犬の声も、駆け回る子供が交わす別れの挨拶も。
その中で、
彼女の長い髪が、風に弄ばれて立てるぱらぱらという音ばかりが、耳に残った。
夕日の中で、金の髪は光に透けて綺麗で。

私の言葉も、その中で、粉々に輝くような気がしたんだ。








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				夕凪の日







 廃墟。
 打ち捨てられて、もはやどれだけの時間が経ったのか判らない、そのコンクリート
製の建物は、半分以上が瓦解しかかっていた。剥き出しになった鉄筋は、真っ赤な錆
を垂れ流している。
 そんな建物は、一つだけではなくて、見える限り全てが風化を始めていた。遠い昔
に廃棄された都市を、西日が照らし出している。
 はやてはあるビルの屋上に、一人膝を抱えて座っていた。背後に長く自分の影が伸
びるのを感じながら、ただじっと、目が焼けるのも厭わずに落ちていく日を見つめて
いる。日なたは暖かくなくなり、風ばかりが冷たくなっていく。
 もう、幾度待ったかわからないあの日を、まだ待っている。
 二度と同じ時は訪れないと、判っているのに、まだ待っている。待たないではいら
れなかった。あの時以外に、もう救いはなくって、あの時以外に、思い出せることは
なくなって。後悔ばかりに彩られたあの瞬間ばかり、繰り返し夢見ている。
 彼女も、誰も、もういないのに。
 自分だけが、取り残されてしまって。
 ふと、西日が翳る。はやての周りに影が差していた。はやてはふっとため息を吐く。
「懲りんなぁ。」
 薄青い空を、眩しくも暖色の光を放つ太陽を遮って、無数の巨大な黒い影が埋め尽
くしていた。そのほとんどが、アルカンシェル級の砲台を持っているのだろう。
 はやてはくしゃ、と髪の毛を握りつぶす。クリーム色をした柔らかい髪が折り曲げ
られる。もうこれで、何回目なのだろうと考えることすら馬鹿馬鹿しくて。捕まりさ
えしなければいい。そのためになら、死すら逃走経路だった。どうせすぐ、修復する。
 今日で、死ぬのは何回目なんだろう。
 思いながら、はやては不意に目頭が熱くなるのを感じて、目を強く瞑った。手で顔
を覆い、嗚咽を噛み殺す。
「永遠なんて、もう、耐えられへんよぉっ。」
 閉じた目蓋の隙間から、涙が染み出して掌に零れた。
 西の空が赤く染まりだす。
 はやては一人立ち上がると、終わり逝く日を見た。濡れた睫が、景色を煌かせて。
昼の消えいく時。夜に飲まれ行く狭間。頭上の戦艦、その主砲に輝きが灯りだす。星
のように。決して願いを叶えてくれることは無いその瞬きに、
「わたしも、みんなと一緒に、死にたかったよぉぉぉおおお!」
はやての涙はただ、地面に伝い落ちた。