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第七話









「ティアナごめんね。
 私のせいで、嫌な思いさせちゃって。」
 会議室から出て、執務官室へ戻る途中のことだ。フェイトはティアナにそう言って謝
った。長官がフェイトに放った言葉の後から、室内の人間がフェイトに向ける視線が変
わったことに気付いてはいた。蔑むようなとまでは行かないものの、懐疑的な目で見ら
れて気分が悪かったことは事実だったが、その理由が判らないティアナには違和感の方
が強かった。
「艦長は昔のことなんかほじくり返す奴らがバカなだけだから、
 気にすることじゃない、なんて言ってましたけど。
 一体どういうことなんですか?」
 先程、酷く憤慨した様子のまま別れた艦長を思い出しながら、ティアナが問う。昔、
なのはが無理が祟って大怪我をしたという話以外に、ティアナはなのはやフェイトの過
去を知らなかった。フェイトは、うーん、と小さくうなった。
「そうだね、あんな風に言われちゃった以上、
 ティアナにも話しておかないといけないかな。
 私となのはが出会った頃の話。」
 フェイトは思い出すように、目線を上げた。
 それは、二人が9歳のころの話だった。
 ジュエルシードというエネルギー結晶体を巡る話。
「なのははユーノと街の人のために、
 管理局の民間協力者として、
 暴走をするロストロギア封印を目指して魔法を覚えながらジュエルシードを集めた。
 なのはは本当に天才だよ。
 使える魔法の系等にすごく偏りはあったけど、
 すぐに充分第一線で戦える魔導師になっちゃうんだから。」
 フェイトは可笑しそうに言った。ティアナは六課でシャーリーに見せられた映像を思
い出す。収束砲を放つ9歳なのはの姿は、鮮明に脳裏に描き出された。高い技術を要す
る魔法を、僅かな期間で使いこなしてみせたそれは、まさに圧倒的なセンスと言えた。
「私は管理局に追われながら、ジュエルシードを捜し求めた。
 管理外世界での魔法行使もロストロギアを奪うことも、
 全部悪いことだって知って、
 それでもなのは達と戦い続けてた。」
 通路に二人の足音が響く。他に歩いている人は居ない。ティアナが相槌を打つと、フ
ェイトは薄く笑った。
「いろいろあって、事件が終わって。
 私は結局、罪には問われなくって保護観察処分止まりだったんだけど、
 そういう強奪紛いのことをやってたから、
 さっきの会議で白い目で見られちゃったっていうわけなんだ。
 まあ、疑われちゃっても仕方ないかな。
 それでティアナまで肩身の狭い思いをさせちゃったのは、申し訳ないんだけど。」
 ティアナはようやく、先程の長官の発言を理解した。同時に、胸の淵で憤りが湧き出
してくる。とんでもない皮肉を言ったものだ。内通者など存在自体が可能性の段階だと
いうのに、罪に問われているならまだしも、保護観察処分を受けただけの人に、当て付
けのようにあんな発言をあろうことか合同捜査本部長官がしたということが信じられな
かった。
「捜査が進展したのは、フェイトさんがあの遺跡を見つけてからじゃないですか。
 それまでは良い様に襲撃を受けるばかりだったっていうのに、
 酷いですよ。
 次世代主力艦艦長が聞いて呆れます。」
 ティアナが怒りを滲ませる。フェイトは謙遜して認めないが、捜査で一番飛び回って
いるのは誰あろうフェイトだ。フェイトがどれだけ必死に捜査を行っているか知りもせ
ずに、軽々しく皮肉など言われるべきではない。ましてや疑われるなどお門違いも甚だ
しい。
 しかし、当のフェイトはそんなこと言っちゃだめだよ、とティアナを宥めた。
「それまでフォルスとパンセの人たちが頑張って、
 活動区域を特定してくれてたから、
 私達はあんなに捜査しやすかったんだよ、ティアナ。」
 一番、怒るべき人物に諭されて、ティアナは不承不承矛を収めた。しかし、やはり、
ここはフェイトにも怒りを見せて欲しかった。項垂れるティアナの肩に、フェイトは手
を置いた。
「ティアナ、私はね犯罪に巻き込まれる人を助けたいんだ。
 それが出来るなら、
 ちょっとくらい嫌なこと言われたって、構わないんだよ。」
 ティアナが顔を上げて、フェイトを仰ぐ。力強い笑顔が、ティアナを見つめていた。
「だからティアナ、こんな私だけど、
 事件解決の為に力を貸してくれるかな。」
 紺碧の空のように純真な眼差しに、ティアナは吸い込まれるような錯覚すら受けた。
フェイトが握った拳を見せる。ティアナも拳を握って、
「もちろんです。」
フェイトと軽くぶつけ合った。
 執務官とその副官は肩を並べて通路を歩いて行く。