ホワイトデー。
2月14日のバレンタインデーに告白する人がどれだけ居るのかはわからないけれど。
その日に貰ったチョコレートのお返しをする日。

だから、私は別に、関係ない。
ミッドチルダだから暦は違うし、第一、彼女とは一ヶ月以上あっていないし。
だから全然、関係ない。
「なのはちゃん、そろそろため息吐くの、やめてくれへん?」
一日に100回ため息を吐くと、
どんなに健康な人でもうつ病になるって聞いたことあるんやけど、
と、はやてちゃんが零したのを、私は一瞥するに留めた。
「次元航行部隊に配属願い出した時から、
 覚悟してたんやろ。
 そうそう会えんようになることは。」
そんな私の後頭部に、はやてちゃんの言葉が降りかかる。
折角のこのお日柄に、折角のお休みに、
こんな私につき合わせて悪いな、とは思うのだけれど。
でも、私としても、まさか自分がこんなに参っているとは思ってみなかった。
仕事中も、ヴィヴィオと居る間も、大丈夫なのに、
はやてちゃんの顔を見たら、なんだか我慢が出来なくなってしまった。
だから、きっと、はやてちゃんがいけないんだよ。
って言うことにして責任逃れしてもいいかな。
「うん、それは判ってるんだよ。
 最初会った時も、さっと私の前に現れて、消えて。
 再会の時だって颯爽とマント翻して。」
私の脳裏に、あの頃が蘇る。
文字通り大きくなったすずかちゃんの猫。
それを射抜く金色の光と、振り返った先に佇む一人の少女。
私と同じ歳ぐらいで、涼しい眼をしていて。
無口で、ただ寂しそうな。
触れる間も無く空に消える、私の小鳥。
「なのはちゃん、小鳥は恥ずかしいからやめて!」
いつの間にか漏れていた私の心の声を、はやてちゃんの悲鳴が掻き消した。
「あれ?」