ホワイトデー。
2月14日のバレンタインデーに告白する人がどれだけ居るのかはわからないけれど。
その日に貰ったチョコレートのお返しをする日。


ホワイトデーが過ぎ去った次の休日。
私はまた、なのはちゃんと一緒にお茶をしていた。

あほちゃうの!?

って自分で自分に言いたくなるし、

いいからフェイトちゃんのとこ行かんかい!!

ってなのはちゃんを怒鳴りつけたくなるけれど。
まあ、帰ってきたといっても、まだ事件の事後処理に追われているから、
そうそうなのはちゃんでも行きにくい、ということなんだろう。
「それでね、それでね、
 フェイトちゃんがね、チョコレートくれたんだよ!
 ほら!」
と喜色満面で未だに包装紙に包まれている小さな箱を見せてくるなのはちゃんに、
私はうんうん、とやや引き攣った笑顔を返す。
友達として、そこはやはり、
良かったね!
と祝福してあげたいところなのだけれど、
同じやり取りを50回は繰り返しているのだ。
もう無理。
「それで、中身見ないん?」
これも、何度目になるか判らない言葉だけれど、私が一応言うと、
「だってフェイトちゃんが包んでくれたんだよ?
 そんな簡単にあけらないよ!」
なのはちゃんは箱を抱き締め、頑なに拒む。
ちなみに、私はその中身が何か知っている。
トリュフだ。
中身は生チョコの二段構えもとい二層式になっていて、
それなりに手が込んだ品となっている。
何故、私が知っているかというと、
フェイトちゃんが先日、手作りチョコを渡したいから、と言って通信を入れてきたのだ。
三分間クッキングなノリで、画面を通して一緒にお菓子作りをしました、
なんて白状したら、
私は苦しまずに空の星になれるかもしれない。
でも、チョコを作っているフェイトちゃんの画像をあげたら、
もしかしたら命は繋げるだろうか。
トリュフは制作の都合上、手がチョコレート塗れになるわけで。
手についたチョコレートを舐めているフェイトちゃんを抜粋してあげたらどうだろう。
私がそんなことを考えているとは露知らず、
目を輝かせてチョコレートの箱をいろいろな角度から見ているなのはちゃんの様子に、
私は内心で首を振った。
なのはちゃんはフェイトちゃんに盲目的だけれど、
意外とというかかなり純なところがあるから、
そんな画像出したら、きっと冗談ではなく私の奥歯はガタガタ言うようになるだろう。
なのはちゃんが、私を振り返った。
「これね、フェイトちゃんがくれたチョコレートなんだよ!」
諦観なのか、なんなのか。
私は、思いっきり今日一番の笑顔を返した。
「よかったな、なのはちゃん。」