高町なのはです。 この間から、私にはずっと考えていることがあります。 「ふーん、何を考えとるん?」 はやてちゃんは私の宣言に、口では余り関心のなさそうな返事をしたけれど、 目はしっかりと私を見つめている。 こうやって、私の話をよく聞いてくれるから、私も話してしまうんだろう。 この、途方もない悩みも、はやてちゃんなら解決してくれるって、 少しでも気持ちを軽くしてくれるって思うから。 私は掌を一度握り締めて、悩みを吐き出した。 「私、どうしてフェイトちゃんが、 あんなに可愛くって、格好良くって、優しくって、強くって、 私の心の中に住み着いて離れないのか、 どうしても分からないの!」 はやてちゃんの動きが止まった。 私は言い切った内容に、もう何度目か知れない愕然とした気持ちを覚える。 あのきらきらした無邪気な目とか、 たまに見せてくれるとけちゃうような笑顔とか、 凛と済ました顔つきとか、 颯爽とした立ち居振る舞いとか、 私を助けてくれた時に浮かべる、 凄く涼しく、当然だよっていう微笑みとか。 私の心の中には、いつも、フェイトちゃんが溢れている。 「え、そんなん、 フェイトちゃんはなのはちゃんの小鳥で、 子犬の可愛さの由来で、 チョコレートみたいに甘くってでもちょう苦くて、 でも王子様そのもので、 トドメはこたつやからやろ?」 はやてちゃんは私の顔を覗きこんで確認する。 そう、はやてちゃんの言っていることは間違ってない。 フェイトちゃんは小鳥で、子犬で、チョコレートで、王子様で、そしてこたつなんだ。 でも、何かが足りないって、私は最近思い始めたんだ。 小鳥と言い表しても、子犬と言い表しても、チョコレートでも王子様でも、こたつでも、 どれも私のこの気持ちを表すには足りない。 「私のこの、胸の張り裂けそうな気持ちの説明には、どれもならないの。 フェイトちゃんのことを思い出すだけで、 心臓がドキドキして、凄く苦しいのに。」 だから、私は思うんだ。 小鳥でも子犬でもチョコでも王子でもこたつでもない。 「フェイトちゃんはもっと違うものだって! 私、きっとフェイトちゃんの何かを見落としてるんだと思う。 大切な何かを、きっと。 それが何か判らなくて、辛くって。」 私は一気に言うと、目を伏せた。 はやてちゃんの視線を感じる。 はやてちゃんは黙ったまま、私を見つめて。 そして、一言、呟いた。 「じゃあ、本人に聞いてみたらええんやないかな。」 その言葉に驚いて顔をあげて、はやてちゃんの視線の先を辿ると、 そこには、手を振りながらこちらに歩いてくる、フェイトちゃんの姿があった