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 それは、閃光だった。

 あまりに強烈に目を焼く熱に、光の色さえ見失うほどの放射。焼けた網膜が閉じて
いる筈の目蓋の裏を、赤黒くも緑にも見せた。音速を超える衝撃波は地面や建物を抉
り、音さえも奪い去った。耳鳴りが作り出す静寂の中を、破壊が突き抜けて行く。あ
れほどに生命の危機を感じて、あれほどに強く障壁を張ったことは、恐らく後にも先
にもこの時だけになるだろう。それほどの。
 それほどの、終末だった。
「うそだろ。」
 誰かが呟く声が茫洋として響いた。うそであってほしいよ、あまりにありきたりな
台詞は、あまりにありきたりで当たり前な想いだった。
 薄く曇っていた空が晴れ渡っている。雲は端切れすらなく、宇宙すら思わせるほど
の吸い込まれそうな青空が頭上に広がって、現れた平原を照らしていた。乾いた風が
吹きさらしていく。砂を吹き飛ばして。
 昔中学校の授業で見た、原爆投下後の写真に似ている。目につく限りの建物が全て
倒壊していた。違うのはここが比較的郊外で、焼けただれて斃れている人がいないと
いうことだろう。元から周辺施設に居る人間の数は少なかったし、ある程度は既に身
柄を抑えていた。
『――――との連絡がつきません!』
 だから、
『ハラオウン執務官以下6名、通信途絶しました!』
最大の被害は内部の人間が受けている筈だった。





					Green flash





「ちょっと無理押し付けることになっちゃうか知れへんけど、
 やってもらえへんかな。」
 はやてが差し出した数枚の書類を、彼女はたっぷり時間を掛けて読んでいた。端正
な額に微かに皺がより、唇がまっすぐ引き締められて行く。
「これ、大丈夫なの?」
 読み終えてからしばらくしての第一声は、はやての予想通りの物だった。
 ある管理世界内に存在すると報告を受けた違法研究施設の捜索。捜査官が上げて来
た案件であり、既に内部捜査を実行するのにも十分な条件が揃っていた。けれど、施
設の建設されている場所が悪かった。
 管理局には違法研究を取り締まる権限がある。だがそれは、いかなる場合にも行使
可能というわけではない。管理世界である以上、そこの許可と協力が必要となる。こ
の施設が立っているのは、管理局の捜査に協力的ではない世界だった。以前フェイト
も、ここでの捜査で手を焼いたと聞き及んでいる。
「一応、話は通してある。
 それにも書いたように、かなり証拠になるようなのも抑えとるから、
 向こうが単純に無視でけへん、ってのもあるけどな。」
 フェイトが相槌をうちながら、紙片の二枚目へと戻った。二枚目には最悪の場合を
想定した被害予測を記載していた。
 最悪の場合とは、魔力駆動炉の炉心融解だ。ここで行われている魔力駆動炉の開発
は、安全性の確保の為に課された制限を満たしていないことが確認されていた。規制
を遥かに上回る規模と、使用しているエネルギー源の安全性の二点で。
「内部監査をしてほしい、っていう話だっけ。」
 書類を閉じ、フェイトが顔を上げた。聡明な眼差しがはやてを見据えた。
「そう、法律屋さんが居て欲しいからな。
 フェイトちゃんのことは、その面でも魔法の面でも信頼してる。
 せやから、フェイトちゃんにやって欲しいんよ。」
 フェイトが静かに口を引き結んだ。こんな風に念を押さなくても、フェイトは恐ら
く引き受けてくれただろう。それは元の性格が理由であるし、懸念される被害規模の
為でもあるし、なにより
「それに、魔力駆動炉の違法研究なんて、見逃しておけへんやろ?」
違法研究の内容であった。わかっているからこそ、はやてはわざと口にした。断れな
い条件を並べて思った通りにさせるのではなく、全て承知の上で頼む為に。彼女との
信頼のために。
「そうだね。
 私も協力するよ。」
 フェイトは仄かにはやてに微笑みかける。はやては大きく頷くと掌を差し出した。
「よし、頑張ろうな!」
 フェイトの掌が、はやての手を軽く叩く。
「うん!」
 軽やかな音が二人の間で弾けた。