フェイトちゃんの朝は、すっごい遅い。 どれくらい遅いかって言うと、うっかり朝ごはんとお昼ご飯が合体しそうなくらいに遅い。 まあ、私が来るんが、次の日が休みって時やからなんかも知れへんけど。 朝食の用意はし終わってる。 今朝はコーヒーって気分やないから、 台所で見つけた貰い物っぽい高そうな紅茶の缶を勝手に開けたった。 それに合わせてまあ簡単やけど、 オムレツ作って、ベーコンとソーセージちょろっと焼いて、 これまたちょろっとサラダをこさえました。 フェイトちゃんの部屋の台所模様は、 これまた勝手に私がやりやすいようにカスタマイズしとるから、 朝ごはん用意するのは本当に朝飯前というわけや。 で、朝ごはんの前にもう一個片付けなあかん仕事がある。 これが、多分おそらく、いや、確実に一番面倒。 寝室のドアの前で深呼吸を一つしてから、私はドアを開け放つ。 寝室の中に入ると、厚手のカーテンの隙間から差し込む光の中に、 穏やかな寝息が一つ描き出されているのが目に入った。 真っ白い光は部屋を斜めに横切って、 まだベッドで丸くなっているフェイトちゃんの横顔に当たっていた。 私はため息を一つ零した。 それから、ベッドに歩み寄る。 スリッパが私の足の下で立てる間抜けな音が呼吸のリズムに紛れるように、 私はなるべくゆっくりと歩く。 そうして、私はベッドの上に片膝をついて、眠っているフェイトちゃんの顔を覗き込んだ。 白い頬を撫でる、朝の光が綺麗だ。 きらきらって輝いて、まるで光の道を作り出しているみたいで。 10時を過ぎた日差しは眩しくなり始めていて、 手を翳せば暖かさを感じられそうなくらいだった。 その光に照らし出された、フェイトちゃんの横顔。 滑らかな肌は柔らかい曲線を描いていて、 掛かる髪は本当に、金糸みたいで。 閉じられた目蓋。 窓に背を向けたフェイトちゃんの睫は、影と光が交差して、硝子細工みたいだった。 整った顔立ちが、眠りの中で少しあどけなく緩んでる。 私は、ゆっくりと息を吐き出した。 「フェイトちゃん、起きて。 朝やよ。」 か細い声。 フェイトちゃんの耳に届いた様子は無くって、身じろぎ一つも返さない。 早く起こさないと、朝ごはんは冷め切ってしまう。 そう分かっているのに、私の口からはそれ以上の言葉が続かない。 勝手に閉じて、こく、っと一つ喉を鳴らして閉ざされる。 フェイトちゃんの胸が呼吸に合わせて穏やかに動いている。 私はそれを見つめながら、少し煩い心臓の音が聞こえてしまわないように、 片手で自分の胸元をぎゅ、っと握り締めた。