フェイトが掌を差し出していた。 ほっそりとした綺麗な女性の手を、子供みたいに、太陽みたいに開いて。 その上には、一個のチョコレートがある。 20円で買える、一粒のチョコレート。 包装紙は牛っぽい柄で、MILKと赤い字で書かれている。 「くれるん?」 尋ねると、フェイトはうん、と頷いた。 その表情が、これまた子供っぽくて、はやては参ったなあ、とぼんやり思い頬を掻いた。 自分たちは同い年で、もう19歳。 自分は部隊長で、彼女は執務官にしてこの部隊の法務を一手に引き受けている。 互いに、相応の地位というか役職についているのだ。 普通の19歳に比べたら、随分と責任を背負った19歳だ。 大人、って言い換えるのとは、少し違うとは思うけれど、 でも、まあ大人びていていいはずではないかな、なんて思うのに。 チョコレートを差し出してくるフェイトの笑顔は、 普通の19歳を通り越して小学生みたいだった。 「ありがとう。」 はやては礼を述べて、そのチョコレートを手に取る。 そうすると、フェイトはますます嬉しそうにした。 「どういたしまして。」 はにかんだ様に笑って、フェイトは踵を返し、 部隊長室に置かれたソファの方へと歩いていってしまう。 そして、すとんと座り込む。 またもや、幼い仕草。 どうしたのだろうと思うけれど、よくわからない。 でも、なんとなく尋ねにくい。 はやては内心首をかしげながら、貰ったチョコレートの包みを開いた。 懐かしいチョコレート。 口の中に入れると、なんとなく、昔に戻れる気がした。