はやてが膝の上に、向かい合わせに座ってきた。 当然のようになんの断りもないその行動に、フェイトも取り立ててなんのリアクションも起こさない。 したことといえば、手の中にあったチョコレートを、 はやてに取られないように口の中にしまうことだけだ。 「よこさんかい。」 目ざとく見つけたはやてがフェイトの頬をつねくるがそうはいかない。 フェイトははやてを見上げたまま、 チョコレートの中に入っていたマカダミアナッツを音を立てて噛み砕く。 チョコレートを飲み込んでから、フェイトが答えた。 「もうないよ。 最後の一個。」 しれっと言い切ると、はやてが両手で頬をつねった。 「きぃ、にくたらしい。」 と、わざとらしい口調で言うと、はやては笑った。 そうして、伺うように見つめているフェイトの前髪を左手でなで上げると、額を晒させた。 「ん?」 フェイトが尋ねる。 はやては右手をフェイトの頬に寄せた。 親指が目の端に触れ、その赤い瞳を覗き込んだ。 透き通るような色。 鮮やかな赤。 不思議そうに見つめてくる瞳を、はやてはじっと見つめた。 「フェイトちゃんの目やと、 どんな風に物が見えてるんやろうね。」 漏らした声の、微かな響き。 フェイトは同じように右手を伸ばすと、はやての頬に触れた。 「私も不思議だよ。 はやての黒い目には、どんな風に世の中が見えてるんだろう、って。」 はやては笑みに顔を歪めた。 「そんなん、普通に見えてるに決まってるやん。」 答えになっていない答えに、フェイトが一息、笑い声を上げた。 「じゃあ、私だって、普通に見えてるよ。」