彼女が、夜空に手を伸ばした。 遠い街灯と星明りで見える横顔に薄く笑みを浮かべて、見上げても果てしない夜空に手を伸ばす。 星を掴むには、空は高すぎる。 指先の欠片すら、夜空に染まりすらしない。 でも、彼女は笑みを浮かべたまま、今は宵の色に翳った赤い瞳で、 伸ばした手を、指先を折り曲げて何かを掴む。 冷たい風に煽られて、金色の髪が舞った。 はやては寒くて、でも、道を急ごうとは口に出来なかった。 立ち止まったまま、空を見上げる彼女を見つめ。 そうして、緩やかにその手の先を追う。 真っ黒い夜空。 そこに、いくつも散らばる、点のような光。 瞬く星。 その下で、風が吹いて、雲が流れている。 フェイトの握られた手が降りてきた。 フェイトがはやてを振り返る。 だから、はやては問いかけた。 「星は掴めた?」 その言葉に、フェイトが仄かに笑った。 「私の星は、隣に居るもの。」