足の裏でステップを刻んで、耳の奥に音を打ちつける。 腕が流れて、髪が光の中で舞った。 雨上がりの煌く世界の中で。 彼女の長い髪が紡ぐ旋律が空気に編みこまれていく。 瞬きの瞬間、数十秒の硝子細工。 「フェイトちゃん、うまいねやっぱり!」 声を上げたのはなのはだった。 短い舞台を終えたフェイトが、照れくさそうに頬を掻いた。 「そうかな。 班のみんなが考えてくれたのが、きっと良かったんだよ。」 控えめなはにかみ笑いが浮かぶ。 中学二年生の2学期の体育は、選択で創作ダンスが入る。 民主的なじゃんけんという手法を用いての採択により、 フェイトは晴れて創作ダンスに組み込まれていた。 選択の違うなのはとはやては見る機会がないからと、 明日の体育での発表を前に、一足早く先取りをしていた。 「それはそうかも知れないけど、 でも、フェイトちゃん、手先まですっごい綺麗だったよ! こう、なんか筋が通ってるみたいで!」 なのはが手を強く握り締め力説する。 フェイトはありがとう、と頬を緩めた。 急ごしらえの特設ステージは校舎裏の、わずか三段の階段の上。 フェイトは白い階段を降りて来ると、 自慢げななのはと顔を見合わせて微笑みあった。 「はやて、どうだったかな?」 フェイトがためらいがちにはやてを振り返った。 低い階段の上が、世界で一番のステージに変わる。 確かに、瞳の中で。 呆然と立ち尽くしてフェイトを目で追っていただけだったはやては、 のどから一度くぐもった声を出してから、笑った。 「いや、私の方が、うまいんちゃうかな?」 君は魔法の踊り子だね。