「ねえ、フェイトちゃん。」
声を掛けると、コーヒーを入れていたフェイトが振り返った。
「ん、なに?」
彼女の手がやかんの傾きを器用に調節して、
少しずつお湯をフィルターの上、コーヒーにかけていく。
泡が膨らんで、コーヒーの香ばしい匂いも膨れ上がる。
はやての気分も膨れ上がる。
「んん、呼んでみたかったの。」
お湯でふやけた笑顔で、はやては答えた。
フェイトがそれを見て首を傾げて微笑んだ。
「今日のはやては、上機嫌だね。」
空いている手を伸ばして、はやての頭をくしゃくしゃと撫でる。
背の差、頭一個分。
それが強調されるようで、普段なら反発するけれど、はやてはそれも受け入れた。
無邪気に目を細める。
「えー、私はいつも上機嫌やで。」
なんせ、フェイトちゃんが居るんやからねー、とまでは口に出さず、ころころと笑う。
コーヒーの熱さに溶けてしまったような笑顔。
フェイトは、もう、と肩を竦めた。
コーヒーがポットに十分落ちる。
フェイトはフィルターを流しに置くと、ポットに溜まったコーヒーを片手に、
少し気取って言った。
「お嬢さん、コーヒーにミルクは入れますか?」