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助手席で、フェイトが窓の外を眺めていた。
覗き見た斜めの横顔は少し眠たげで、普段より目蓋が落ちていた。
日の暮れた空は、街灯と、市街地に並ぶ店の看板やネオンサイン、室内灯の白々とした輝きに照らされることなく、
穴が開いたかのように真っ黒だった。
何にも褪せることのない黒は、何もかも飲み込んでいる。
はやてはアクセルを少し強く踏んだ。
視野の淵を流れる左右の景色が加速し、前方の風景が迫ってくる。
車間距離は十分。
前の車が零す、テールの赤い光は少し遠い。
これが例えば、夜の高速道路かなんかの渋滞で、
ブレーキランプが真っ赤にいくつも灯って延々と並んでいるのでも見れば、
王蟲の群れだ! なんて言って遊べるのだけれど。
音楽の無い車内は、くぐもったエンジン音がぼんやりと聞こえてくるだけで、
周囲と隔絶された静かな箱だった。
もう一度、はやてはフェイトの様子を伺った。
表情を確認するほど、余裕は無い。
フェイトは最近、妙に物静かだ。
別段、何か変わったことがあった等という話は、彼女の周囲の誰からも聞いていない。
事件捜査の方でも、特別問題があったというわけでもないと知っている。
ただ、なんとなく普段より口数が少ない。
はやてが勝手にそう感じているだけかもしれない。
シャーリーやティアナにあったけれど、フェイトを気にしている素振りはなかった。
だから、気のせいの可能性の方が、高いのだろう。
いつも一緒に居るはずの人が、何も思わないのだから。
数十メートル先にある信号が赤に変わる。
前の方の車から、次々に減速して一列にならんで整列する。
片側二車線のこの道路では、それが2つならんだ。
はやてもアクセルを離し、緩やかに減速する。
信号まで5、6台前に並べ、車は列にならんだ。
ブレーキを踏み込む。
フェイトよりも少し下手な運転で、体がつんのめって止まった。
はやては一度意識して呼吸すると、フェイトに声を掛けた。
「何見てるん?」
フェイトの肩が、微かに震えた気がした。
髪が頬を滑り、フェイトがはやてへと顔を向ける。
赤い瞳に、何処かのライトが差し込んでいた。
淡い陰影のついた顔。
フェイトは口を少し開きかけ、そこで止まった。
「ん、どうかした?」
問い返すと、フェイトは首を振った。
「ううん。何でもないよ。」