珍しく遠出をして遊びに行った日だった。 電車に乗って小一時間の帰り道。 10月も終わりとなれば5時を回れば外は真っ暗で、 もう9時を回っている今となっては、なおのこと外は暗かった。 海鳴にはまだ程遠い。 車窓からは線路と並走しているはずの有刺鉄線の柵さえ、 忽然と姿を消している。 見えるのは、遠くにある街灯や家の窓からの明かりくらいだ。 はやてはボックス席の向かいに座っているフェイトに尋ねた。 「銀河鉄道の夜って、知っとる?」 網棚を見上げていたフェイトが、はやてを見、 それから同じように窓の外に視線を移してから答えた。 「最初のほうだけ、読んだことがあるよ。 金剛石の箱をひっくり返したみたい、とかだっけ?」 フェイトがうろ覚えの一文を口にする。 はやては微かに口元に笑みを浮かべて肯定をした。 窓の外を、孤独に立った街灯が一つ、また一つと流れていく。 遠く、近くに。 はやては窓ガラスに側頭部を預けると、一言呟いた。 「いびつで汚れた金剛石、やね。」 夜風に冷えた窓ガラスが冷たい。