「はい、フェイトちゃんあーん。」
はやてが割った板チョコの破片をフェイトの口に差し出してきた。
本を読んでいたフェイトは、なんのことかわからず目線だけをはやてにくれる。
「ほら、あーん。」
破片のとんがりで唇をつつく。
早く食べろと笑顔で告げる。
フェイトは促されるままチョコを口に入れ。
二秒後。
「にっぅっがっ!
 な、なにこ、れ・・・!
 うっ。」
声をひっくり返し、飲み込めないとばかりに口を大きく開けて舌を出した。
吐き出そうとティッシュに手を伸ばすフェイトを、はやては両腕で押すと、ソファにそのまま縫いとめる。
「はやてっ!
 これ、ほんと、にがいんだよっ・・・・!」
涙目で見上げてくるフェイトに、はやてはうんうんと頷いた。
「カカオ90%やからねー。
 いくらコーヒーブラックでのめるフェイトちゃんでも、おいしくたべられへんかったかー。」
言う間にも、フェイトがチョコを吐き出す先を求めてじたばた暴れる。
飲み込むとか言う選択肢は一切存在しないらしい。
「はやてぇっ!」
涙声になるフェイトに、はやては首をかしげた。
「そんな苦いん?」
そう疑問を口にすると、フェイトの肩を掴んだまま、舌の上に所在無さげに乗ったチョコを舐めた。
フェイトが驚いた様子で赤面する。
はやては顔をしかめると、「こら苦いわ。」と呟いた。
そして、フェイトを放して立ち上がる。
「やっぱり、ホットチョコレートにするしかないな。
 味見ごくろうさまー。」
ひらひら片手を軽薄に振ると、そのまま台所に向かっていった。