が風の中に立っている。
長い髪が黄昏の風を黄金に輝かせ、微かな音を立てる。
私は目を細め、 の姿を瞳に納める。
太陽に呑まれる様佇む の背中には淡く影が落ち、
足元に長く伸びた黒い人型は私の靴の直ぐ傍に触れていた。
タイルの隙間に蟠る砂埃と、緋色の光と。
「 。」
名前をふっと口に乗せると、 は静かに振り返った。
風に弄ばれる髪を押さえる指先は白く。
 の唇が音を紡ぐ。
「はやて。」
空白を抱いた声だった。
真紅の瞳は見開かれて、まるで初めて私を見たみたいに。
私は口許を綻ばせ、音を立てないように隣に歩み寄る。
屋上の手すりに手を掛け、地平の向こうに沈んでいく日を見つめて。
その熱に焼かれた目、視界の一部が色を変えるけれど。
「フェイトちゃんと、一緒に帰ろうと思って。」
少し冷たい風が吹き上げて、私の前髪を散らした。
フェイトちゃんの手が、手すりを握り締めるのだけが見えた。
私は、卑怯だろうか。
フェイトちゃんの目は、遠い日を見つめていたのに。