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 学校の帰り道、ちょっと回り道をして、はやてとフェイトは商店街を歩いていた。フ
ェイトの消しゴムがなくなりそうだったから買うためだ。本屋の文房具売り場に居るフ
ェイトを尻目に、はやては本棚を見上げていた。近頃はいろんな国の神話やおとぎ話に
凝っている。
 カラフルな背表紙のタイトルを見上げながら、はやては手に取る本を決める。本棚の
上の方、ロマのなんたら、と書いてある奴だ。背伸びをしてようやく手が届く。はやて
は苦労して本を手にすると、青い花が描かれた表紙をしげしげと眺めた。ぱらぱらとめ
くり、裏表紙を見る。この前貰った図書券で買える値段だった。
 はやては本を胸に抱えると、文房具売り場を覗いた。丁度、買う消しゴムを決めたら
しいフェイトを目が合い、二人でレジに並んだ。
「ん、消しゴム一個、100円だよ。」
 フェイトの手から消しゴムを受け取ったレジのおじさんが、目を細めてそう言った。
フェイトはポケットから小銭入れを取り出すと、そこから100円を掴んでおじさんに
手渡す。
「はい、消しゴムとレシート。」
 おじさんはレジを打つと、レシートの上に会計済みのテープを貼った消しゴムを乗せ、
フェイトの掌に置いた。消しゴムを手にしたフェイトが嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます。」
 はいはい、とおじさんは楽しげに返事をした。
 今度はフェイトの横からはやてがちょろっと出てきて本の会計をした。会計の終わっ
た本を抱えたはやてがフェイトの横に並ぶと、おじさんはちょっと待ってな、と言って
カウンターの奥をなにやらごそごそやりだした。
「うい、うちの小さいお得意さまだからな。」
 そう言って、おじさんは二人の手に飴玉を握らせた。三角形のいちごみるくの飴だ。
「わあ、おじさんありがとう!」
「ありがとな!」
 フェイトが両手で飴を握り締め目を輝かせ、はやてが頬を綻ばせると、おじさんは嬉
しそうに目を細めた。ガラスの引き戸を開き、フェイトとはやては手を振って、店の外
へと出る。
「飴貰っちゃったねっ。」
 心なしか弾んだ足取りでフェイトが半歩先を歩く。はやても上機嫌に商店街のタイル
の上を跳ねた。
「私、この飴好きなんよ。」
 言われてフェイトは貰った飴を見直した。掌に載った飴は、白地にイチゴの絵がプリ
ントされている。形はなんとなく三角形だ。フェイトはまだこの飴を食べたことがない。
「そうなんだ。
 でも、学校の帰り道に食べちゃだめだよね。」
 そう言うフェイトの背中で、ランドセルが跳ねる。突き出したリコーダーが印象的な
のははやても一緒だ。
「そうやね、確かにあかんかも。」
 頷くと、フェイトは残念そうに眉を垂らした。
「なあなあ、今日、フェイトちゃんち行っても、大丈夫?」
 お預けを喰らった犬みたいなフェイトが俯き気味だった顔を上げて、うん、と頷いた。
「はやて、うち来る?」
 フェイトが垂らしていた尻尾と耳をピンと立てた。それを見て、はやては大きく頷く。
「うん、行く!」
 大きく口を開いて笑うと、フェイトの笑顔まできらきらした。
「競争してこ!
 早く着いたら、早く飴食べられるで!」
 言うや否やはやてが駆け出すと、フェイトが追いかけて走ってくる。ランドセルの中
で教科書と筆箱が跳ねる。算数と国語と図工と道徳だ。リコーダーを持って帰るのは、
明日がリコーダーのテストだから。フェイトの声が、はやての背中に触れる。
「ねえ、一緒に、リコーダーの練習しようね!」
 はやては弾んだ息のまま、振り返って笑った。
「うん!」