ふと隣を見ると、はやてが天井に手を伸ばしていた。
ベッドサイドの電気も切って、光は厚いカーテンの隙間から差し込む月光の一筋だけ。
それはベッドのフェイトの上を乗り越え、はやての横顔を通っていた。
開かれた瞳は暗闇のため薄青く、月光が揺らいでいる。
「眠れないの?」
フェイトははやてが指を一つずつ握り締めていくのを見ながら、そう問い掛けた。
フェイトが目を覚ましているのに気付いていたのだろうか、はやてはさして驚きもせずに、
枕に載せた頭をくるりと巡らせた。
光が顔を斜めに過る。
「ん、なんかちょっとな。
 別に考え事とかしてるわけやないんやけど。」
そう? と少し擦れた声でフェイトが尋ねる。
すると、はやては微かに笑った。
「うん。
 ただ、やっぱり夜は暗いなあ、って思っとっただけ。」
はやての手が下りて来て、フェイトの頬に触れた。
暖かい手触りに、フェイトは目を細める。
擦り寄ると、はやてが笑い声を漏らす。
「かわいいな。」
呟くと、フェイトが恥ずかしそうに照れ笑いをした。
こんなに美人でかわいいのに、言われ慣れていないところがなおさらかわいい、
なんて思うのは相当のぼせてるな、と頭の片隅で他人事めいて思うけれど。
それもいいかな、とも思った。
「こう暗いと、フェイトちゃんの目もなんや黒っぽくみえるな。
 濃い藍色みたいな。」
言いながら、はやてはフェイトの頭を軽く撫でる。
すると、はやての手の中で、フェイトがこちらを見つめた。
「はやての目も、そんな色してるよ。」
そ? と問い返せば、フェイトはそうだよ、と頷いた。
はやてはだから、こん、と額をフェイトのおでこにくっつけて笑った。
「じゃあ、今だけは同じように見えてるんかな?」