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「いけ、貧乏花!」
 はやてが威勢よく、手にしたハルジオンだかヒメジョオンだかに似た花を指で弾いてフェイトに
飛ばした。
「貧乏になんかならないよ!」
 一瞬早く気配を察していたのか、フェイトは背後からの一撃を振り返り様に避けた。指先程の白
い花は無情にもアスファルトの上に転がった。
「あー、フェイトちゃんが避けるから、
 お花さんが誰も貧乏にすることすらできないまま、無駄に散ってしまったやないか!
 これじゃあ犬死にや!」
 唇を突き出して不満たらたら、はやてが違う花を手に構える。フェイトはじりじりと後ろに下が
りながら距離を取りつつ、腰を低く落とす。
「そうやって同情を誘ったって、はやてが花をそうやって飛ばすからいけないんだよ。
 それに、小学生の頃からいつもいつも当たってばかり居られないからね。」
 口に笑みを引く。フェイトははやてから注意をそらさぬまま、広場の様子に気を配る。昼下がり
だが、人通りは少ない。ここなら多少大きく飛び退ることも出来るだろう。
「ええやん、ちょっとくらいびんぼーになったって!
 18であんな高そうな車買ったくせにっ。」
 はやては悔しそうに声をあげ、一歩踏み出した。間合いギリギリの距離。互いの緊張が最も張り
つめる距離だ。サバンナで肉食獣と草食獣は、互いの限界のライン上で攻防をするのだ。
 フェイトの靴の下で小石が鳴った。はやての前髪がほのかに柔らかい風に吹き上がる。
 そして、はやてが飛び出し貧乏花を
「覚、」
解き放
「ごぉっ!?」
ちかけて石畳の隙間に足を取られてつんのめった。
「はやて!」
 フェイトが風になって駆ける。手を伸ばして、逃げ切れるかどうかだった距離を一瞬で通り抜け
てはやての元へ。地面に手をついて転ぼうというはやてを抱き止める。
「もう、いきなり転ばないでよ、はやて。」
 自分にのしかかるはやてを立たせて、フェイトはほっとしたという風に頬を緩めた。はやては左
手でフェイトの腕にしっかと掴まり、彼女を見上げた。そして、右手にした花をフェイトの顔に向
ける。
「おりゃっ!」
 ヒメジョオンだかハルジオンだかの小さな花が、ぴょーんと飛んでフェイトの顔面に当たった。
「敵に温情をみせるとは、掛かりおったな。」
 いやらしい笑みを浮かべながら、はやてがフェイトの顔にもう一発花をぶつけた。小さな花はフ
ェイトの頬に当たって跳ね返り、ジャケットの間に落ちる。
 フェイトは無言で、自分の左手を捕まえているはやての手に、自分の掌を重ねた。
「はやて。私、心配したんだからね。」
 その言葉に、はやてはフェイトの目を見つめた。真剣な眼差しは昼の光にきらきら光っている。
広場を囲うように植えられた広葉樹の淡い輝く葉が、風に囁き交わす音が突然、はやての耳に聞こ
えた。
「フェイトちゃん。」
 呟いてはやては、ヒメジョオン的な花の最後の一つを、フェイトの顔面にぶつけた。
 フェイトが静かな顔で、口を閉ざした。そして、

「悪い子には、こうだ!」
「うわぁ、やめろぉっ!」
はやてを捕まえて、脇を思いっきりくすぐった。
「ちょ! ま、あっははは! やめてって!」
 身を捩り、はやては本気で逃げに掛かる。けれどフェイトはさっき掴んだ手を引き寄せてはやて
を捕まえた。思いっきりくすぐると、はやてはじたばたと暴れ出す。
「人が真剣な時に花をぶつけるなんてっ。
 それにこの、足元に、散ってる花がかわいそうでしょ!」
 抵抗するはやてがフェイトの左手を掴む。利き手じゃないから分が悪い左手ではやてと力比べを
しつつ、右手は避けようとするはやての左腕と高速戦を繰り広げる。
「どーせ、こんなとこに生えとっても、そのうち雑草いわれて刈られるのが定めやねん!
 最期に花を咲かせてやりたいやんか!」
「そんな言い訳で、人をびんぼーにしようとしないでっ!」
 二人が白熱した戦いを繰り広げる。そのとき、控えめな声が横手から響いた。

「あの、もうミーティングなんですけど・・。」
 そこには半笑いを浮かべたティアナが、片手を軽く上げて立っていた。