跳ねるようにフェイトが防波堤の上を歩いていく。
金色の髪が広がって、海風に光の粒が絡まる。
潮の匂いが肌を撫でる。
はやては煩い前髪を押さえながら、その後ろ姿を追いかける。
電動車椅子のモーター音が背中を押した。
「はやてはこの街に住んで、どれくらいになるの?」
白い制服のスカートが風に煽られて膨らんだ。
薄曇りの空を切り取りフェイトは足を止めた。
「覚えてる限りは、ずぅっとここに住んどるよ。」
隣に寄ると、フェイトの相槌が潮騒の合間に聞こえた。
はやての視線は防波堤の高さをぎりぎり超える。
黒ずんだコンクリート壁に這うように、暗い紺色の水平線が見える。
フェイトの足がまるで水平線を踏んでいるようだった。
「この街、好き?」
消波ブロックにぶつかった波が砕ける衝撃が胸を撃った。
はやては首を左へと振り、山を背後に従える海鳴の街を仰いだ。
幾重にも民家とビルが重なり、その奥に山並みが霞む。
「好きやよ。」
答えながら、フェイトに振り返った。
フェイトは濃淡の無い、真っ白な空を見上げていた。
靡く金髪が細い流れを作る。
日もないのに、それでも影が薄らと見えるのは不思議だな、とぼんやりはやては思う。
幼いフェイトの顔が、はやてを振り返った。
「そっか、よかった。」
自分の肩に頬を当てて、フェイトがにこっと目を細めた。