暖かい光だけの世界に居た。
体を正面から包み込む光が額を腕を温めて、ほのかなまどろみが立ち上る。
閉じたまぶたの中は燈赤色に満たされている。
遠く、隅々まで広がっている音が耳元にそっと触れていく。
風の音と、違う階から聞こえる人の気配と、ひとつの足音だった。
密やかな足音はすぐ傍で止まった。
前の席に、誰かが座る気配がした。
目を閉じていれば、光だけの世界で居られるのに、
はやてはそっと目蓋を押し開いた。
睫が窓から差し込む西日を弾き、霞む視界にゆっくりと教室の窓が描き出される。
三階から見下ろす校庭には、運動部の姿がいくつも見えた。
瞬きを繰り返し、はやては前の席を振り返った。
長い、飴色をした髪が彼女の肩を流れている。
「なんや、なのはちゃんかぁ。」
なのはは目を細めると、掠れた声で囁いた。
「はやてちゃんか。」
机の上に残された消しゴムかすが一つ、長い陰を伸ばしている。