ゆるい眠気が目蓋を撫でていた。 ソファに体を横たえたまま、はやては意識して瞬きを何度も繰り返す。 リビングのテーブルではのんきな家人達が古いボードゲームを広げていた。 海鳴の家に置いてきたと思っていたのに、いつの間に誰が持ってきたのやら、 不思議に思うも唇は動かない。 耳がだらだらと皆の会話を右から左へ垂れ流す。 夕飯も終えて、暖房がぼうっと体を包む。 「1、2、3・・・・あ、子供うまれた。」 「ヴィータちゃんすごいです、もう4人目ですよ!」 「車がぎゅうぎゅう詰めだ。」 安いプラスチックのルーレットがからから回る音が耳朶を叩く。 「うっ。」 「あらシグナム、解雇されちゃった。」 弾む声を聞きながら、脳裏に皆の顔が過ぎる。 見てもいないのに顔が見える。 はやては長い息を吐き出して、寝返りを打った。 鼻先をソファの隅に埋めると少し息苦しかったけれど、肘掛けの具合がちょうど良い。 腕を組んで目を閉じると、誰かが薄手の毛布を掛けてくれた。 「ザフィーラ、次はおまえだぞ。」 シグナムが呼ぶ声がすると、毛布を肩まで引き上げた手が離れていく気配がした。