息もつけないような雨の中、
 わたしは足に泥がはねるのもかまわずに、
斜面をかけ下りていた。
ふりつもっていた葉っぱはす足にはりついて、
小枝がぱしぱしといくどもいくどもわたしの頬を打った。
とげのある木がほおをひっかいて、
 ふかく突き刺さるのをかんじたけど、
それよりもからだのほうが熱くいたかったから、
 わたしは日が落ちていく薄暗い森をかけおりてそして
「フェイトちゃん。」
白い光が目に飛び込んだ。
あまりにまぶしくて、フェイトは強く瞬きを数回繰り返した。
毛布を引っつかんでぐるりとまるまりながら、口の中でうめく。
「そのサイドランプ・・・あかるすぎるって言ったのに・・・。」
そう言うと、やわらかな声が背に降った。
「せやね、今度、電球の色、橙色にしよか。」
指が汗で首筋にはりついた髪をすいてくれる。
その手がやんわりと頭を撫でてくれると、うっすらと開いたまま自分の足指を見ていたフェイトの目が閉じていく。
彼女が身じろぎをして、ベッドが揺れた。
太ももが背中に触れる。
「ほら、おやすみな。
 フェイトちゃん。」
言葉の雨が降る。