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「昨日、落ち葉の中から蝶々が飛んだの。」
 竹箒で境内を掃きながら、レイがそう呟いた。その眉間には皺が寄ったままで、亜美は自分との会話に窮
したのだと推測した。
「落ち葉の中から?」
 秋だった。境内の広葉樹は色づき、一斉に葉を降らせている。レイが乾いた落ち葉を集めるうちにも、冷
たい風に吹かれた枝が陽光を弾きながら葉を空気に乗せる。見えない手に導かれて、枯葉は宙で軌跡を描く。
「そう。葉っぱの中に、なにか水色の破片が落ちてたの。
 たぶんゴミかと思って、箒で掃いたんだけど。」
 縁がぎざぎざした葉は、桜が落としたものだ。レイは竹箒だけで器用に作った落ち葉の山を前にして、ち
らと亜美を窺った。黒い瞳が亜美を探るよう見つめる。
「羽根の端が水色した蝶々だったの。
 他は落ち葉みたいなんだけど、先だけきれいな色で。
 ぱっと舞って、何処かへ飛んで行ったのよ。」
 整ったレイの柳眉が微かに額に寄った。その横顔が空を振り仰ぐ。空の最も高い所で、層雲が浮かんでい
る。亜美は制服のスカートを握り締めていた。
「ちょうどあんな色、だったの。」
 瞳に水色の空を映すレイを、亜美はただ息を呑んで見つめた。