「はっ・・・ぁ・・・っ。」
 彼女の細切れの息を呑み込むよう唇を塞いだ。押さえきれない彼女の声が口の中に吹き込まれて膨れる。
なんて息苦しい口づけだろう、でも、いつも冷静な参謀である彼女が、その身のうちに秘めた熱全てを解き
放つように自分の下で喘いでいる。押し込めた中指であたたかく柔らかな彼女の内を掻く。何度も。
「っあ! あ、ーーーっ。」
 真っ赤に染めた顔は苦しんでいるみたいに、ぎゅっと両目が閉じられている。唇を結んでたぐり寄せたシ
ーツを握り締めて額に押し当て、跳ねる体を彼女はなんとか封じ込めようとしていた。彼女の中に入れてい
る指はこんなにも濡れていて、胸は上を向いているのに。夜の寝室には彼女の喘ぐ声以外なにも見つからな
いのに。
 腰から背中まで欲情が駆け上って気持ち悪さすら感じるくらいだ。はっ、と彼女が息を漏らすその隙に合
わせて、指で腹の内を撫でた。彼女の上体が跳ね起き、震える手でジュピターの頬から髪に触れる。小刻み
に揺れる毛先に満足して、ジュピターは指で同じ場所を押す、少し強く。眦に涙まで浮かべた顔が肩口に埋
まった。熱い息が首筋を滑り落ちる。
 ジュピターは彼女の胸元に言葉を垂らす。
「マーキュリー。いい?」
 押し付けられていたマーキュリーの額が頬に寄った。短い髪の隙間に覗く赤らんだ耳に微笑を吹きかけ、
押し付けられた体を眼差しでそっと撫でた。白く華奢な肢体は熱に内側から色づいて、うなじの髪が汗で貼
り付いている。開かれた足の間、なめらかな下腹部へ到るそこに自分の指が入っている。サイドランプが灯
す橙色の切れ端が腕を擦り抜けて差し込んで、指から掌に絡むものをぬるい光沢で描いていた。
 奥まで入れてまた抜く度に、声と音は大きくなる。
「だ、・・・めっ。」
 絞り出した返事を聞いて、指を奥まで突き入れた。シーツの海に嬌声ごと押し倒して胸の先に歯を立てる
と、とうとう仰け反った体が指をぎゅっと圧迫した。声が窓を叩く。
 彼女の膝を掴んで足を開かせると、ジュピターは指を引き抜いた。震える体でマーキュリーが見上げてい
る。手の甲で口元を覆って、涙の滲んだ目で、ジュピターの仕草をずっと見つめている。
「だめなんて、だめだよ。」
 無邪気さを装いきれずに笑ってみせると、開かせたマーキュリーの腿の内側に、ジュピターは歯を立てて
口づけた。