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 その白い封筒に触れた時、指先からそっと


 中庭に雲間から日差しが降り注いでいる。灰色の雲の縁は金色に輝き、その光の帯の中を数羽の鳥が影を
靡かせて飛んで行く。翼に打たれた冷たい風は銀座に吹き下ろし、日陰に解け残る雪を洗う。
 アイリスはマフラーに首を埋めた。仕立てのいいチェック柄の間から、真っ白く凍った息が空気に広がり、
ふっと消えて行く。ベンチから這い上がって来る寒さは剥き出しの指先にまで染み、ほっそりとした手は色
を失っていた。その手の間、膝の上に、一通の封筒が乗っている。
 アイリスは金色の睫の揃う目蓋を伏せた。長い旅を経て、紙面の端々をくたびれさせた封筒に、右手を載
せる。凍る指先に紙の感触が伝わった。落ちる影の間に、差出人の名前がある。
「エリカ。」
 アイリスはその名を青ざめた唇から紡ぐと、口を閉ざした。