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 幸せにならなくっちゃ、うそだよ。









---- Bon anniversaire, Hanabi et 





 顔を上げたメルの視界に、グリシーヌと大神の姿が映った。「あ、」と声が出そうになるのを押さえ、
咄嗟の機転で花火を振り返る。
「花火さん、目を閉じてください。」
 え、目をですか?とメルの言葉に首を傾げる花火に、
「後ろ向いちゃダメですよー!」
と珍しく機敏な判断をしたエリカが後ろから抱きつきがてら目隠しをした。ロベリアが笑う。
「そうだぜ、花火。
 お前も18になったんだから、人の言うことくらい素直に聞けなくっちゃなぁ?」
 目隠しされたまま、花火は首を傾げる。エリカの暖かい手は汗で少し湿っていた。後方からグリシー
ヌの声が響いた。
「すこし場所をあけてくれ。」
 二人分の足音だんだん近づいてくる。シーとメルの声が続く。
「はーい。じゃあ、ちょっとエリカさんと花火さんいいですかー?」
シーに言われると花火は肩を押された。テーブルから遠ざけられる。
「エリカ、転ばないでよ。」とコクリコはエリカに釘を刺す。
「隊長、大丈夫か。」
 グリシーヌが大神の様子を伺う。
「ああ、大丈夫だ。下ろすよ。」
皆が息を呑む気配。
グリシーヌが珍しく照れた声を出す。
「シーとロベリアが手伝ってくれて・・・な。」
「ねえねえ、ろうそく立てないの?」
コクリコが尋ねる。タレブーが「では、持って来ましょうか。」と言ったのを、コクリコは「大丈夫だ
よ。」と制する。高らかに声を上げる。
「はいはいはい、じゃあみんな見ててねー。
 Un! Duex! Trois!」
「コクリコ、すっごーい!」
「いつみてもたいしたものだね。」
「じゃあ、今度はそいつに火を点けなきゃいけないねぇ。」
 ロベリアがそう言った直後、ぼっ、という音が上がった。
「おお!
 アンタもやるもんだねぇ。」
「はーい、じゃあ、手持ち無沙汰なみなさんには、これをプレゼントでーす。」
「あー!それはこの間、コクリコが作ってたやつですねー!」
「お前は少し黙ってろっての!」
「エリカさんが手を離したら、一斉に鳴らしてくださいね。」
「了解!」
 グリシーヌが言った。
「よし、じゃあ花火、もう目を開けていいぞ。」

 
 エリカが花火の瞼から、指を一本ずつゆっくりと剥がしていく。瞼の裏に陽の光が強烈に差し込んで
くる。7月の眩しい太陽。花火は何度も瞬きながら目を開く。光が真っ白に溢れかえる。瞬間。
 パン!パン、パン!!
「誕生日おめでとう!」
 はじける音。舞い散る紙ふぶきが陽光を反射して白に、赤に、黄色にと彩る。その向こうに、一抱え
もあるような、ホールのケーキがテーブルの上に載っている。そして、ケーキと花火を囲むように、皆
が立っている。精一杯の祝福を、花火に向けている。
「このケーキ、グリシーヌさんが作ったんですよ。
 すごいですよね!
 おいしそうですよね!」
 エリカが誇らしげに胸を張る。
「エリカってば、さっきあんなにシュークリーム食べたのに、がっつき過ぎだよー。
 花火も早くエリカを止めないと、先に食べられちゃうよ!」
 コクリコが頭の後ろで手を組んで、呆れ顔から笑顔になる。
「アタシからの誕生日プレゼントはこのケーキってことでいいだろ?
 なんせ、あそこのお貴族様があんまり使えないもんで、
 ちょっと手伝うつもりが、随分こき使われたからな。」
 ロベリアがうそぶく。
「花火さん、そんなことありませんからねー。
 グリシーヌさん、すっごく頑張ってましたから!」
 シーがにゅっと顔を出してくる。
「もう、シーったら。
 花火さん、改めて誕生日おめでとうございます。」
 メルが微笑む。
「それにしても、こんなに大きなケーキが最後に登場するとはねぇ。
 いやぁ、幸せだなぁ。」
 迫水が目を輝かせている。
「まったく、鉄壁が形無しだね。
 なんだいその緩みきった顔は。」
「まあいいじゃないですか。
 花火君、あらためて誕生日おめでとう。」
 グラン・マと大神が口々に言う。その輪の中で、一人、口を閉ざしたままグリシーヌがに明後日の方
に顔を逸らしていた。シーがそんなグリシーヌの腕に抱きついて、くるりと身体を反転させる。グリシ
ーヌはただ、照れていた。
「ほらぁ、グリシーヌ様ったら照れてないで。」
 反対の腕には、エリカが引っ付いた。
「そうですよー、このケーキはグリシーヌさんの今世紀最大の最高傑作じゃないですか。
 胸を張らなくっちゃダメですよー。」
 それから二人は、グリシーヌ越しに顔を見合わせて声をそろえた。
『ねーっ!』
 間に挟まれたグリシーヌは、何故か気まずそうな顔で、ケーキを示す。
「早くろうそくを消せ。
 蝋が垂れる。」
 そのあまりにぶっきらぼうな様子に、腕を絡めたままのシーが、グリシーヌに軽くショルダータック
ルを入れる。エリカは軽くひじ鉄砲をわき腹に打ち込む。二人に急かされて、とうとうグリシーヌは花
火を見つめた。
 青い瞳が、7月の日差しを受けて、きらきらと水面のように輝いていた。
 照れ顔はやがて、咲き初める花のように、綻んだ。

「花火、誕生日おめでとう。」


 その、花火の瞼の縁から、涙がぽろっと零れ落ちた。
「・・・花・・火?」
 花火はとっさに顔を手で覆うようにして、涙を隠す。しかし、涙はその端から溢れて、指を濡らし頬
を伝う。グリシーヌが花火の顔を覗き込む。あまり背の違わない二人の額は近い。
「泣いたりして、どうしたんだ?」
 グリシーヌの声はやさしい。普段、誰に対して話す声よりも、ずっと。グリシーヌはそっと花火の手
を取ると、ハンカチで濡れた頬を拭く。雫がついた黒い睫が一度瞬くと、深い緑の瞳がグリシーヌを見
つめた。
 その腕が、グリシーヌの背に回される。「花火。」零れた声には、戸惑いが混じっていた。鈍い痛み
を感じるくらいに、腕の力が強かったからだ。グリシーヌの肩に顔を埋めた花火が、嗚咽を漏らしてい
るのがわかった。背中が何度かしゃくりをあげるのを見かねて、グリシーヌは軽く背中を叩いてやる。
「――――ごめ・・っ、なさ・・・。私、わたし・・・・。」
 言わなければならないことが、たくさんあった。
 溢れてくる言葉が、たくさんあった。
 すべてが洪水のように押し寄せる感情によって、流されてしまう。
 涙が喉に絡んで、声は声にならない。
「ふふ。泣くな、花火。
 みなが心配するぞ。」
 グリシーヌがそう言って、花火の頭を撫でる。
 そしてまた、胸の奥から熱く、込み上げるものがあるのに、どれもこれもが、嗚咽にしかならなくて。
 どうして、言葉はこんなにもどかしいのだろうと。
 どうして、自分は彼女の全身の優しさに包まれておきながら、言葉一つ贈る事が出来ないのだろうと。
「グリ、シーヌ・・・・っ。」
 やっと気付いた、あなたの優しさ。
 やっと気付いた、あなたの強さ。
 やっと気付いた、あなたの存在。

 あなたの、悲しさ。

 それ全てに応えたいのに、
 何一つ返せない自分がもどかしくて、
 それすらも受け止めてくれるあなたが、あまりに幸福そうに微笑むから。

 私はただ、拙い言葉で、子供みたいな言葉で、
 でもそれが、一番私の気持ちを伝えてくれると信じて。

「ありが・・・とう、グリシーヌ。
 大好き。」

 溢れる涙と共に零す。


 私を、ずっと、支えていてくれた人。
 突然、空から雪のように淡いピンク色の花びらが、舞い落ちてきた。小指の先ほどの大きさの花びら。
風に乗り、絶え間なく降り注ぐ。みんなが、せーの、と声を合わせた。


「Bon anniversaire,Hanabi et Glycine!!」



 グリシーヌの手が、花火の背中を握り締めた。
 指先が震えていた。

































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 7月にはアップしよう!
 と思っていたことを思い出す。
 もう12月下旬ですかそうですか。
 これまでに書いたSSは全てこの話に、
 どこかしら繋がっているというつもりです。
 時系列的にというか、なんというか、あれです、
 グリシーヌ☆総受けがコンセプトですしこのサイト。
 花火とグリシーヌというかグリシーヌもあの海難事故で、
 立場は違えども、ショックを受けているはずなのに、
 グリシーヌのそういう描写ってなかったなぁと。
 花火の心配ばっかりするグリシーヌだけで、
 グリシーヌは花火に意識されてない…
 自分の思い違いか知れませんけど。
 せめて気付いてあげてよ花火!
 想いよ通じろ!という、

 そんな話でした。
 '07.12.26