窓際に座って彼女が本を読んでいる。 頬杖をつき、淡々と時折ページを捲る。 その紙が擦れる音は現れては図書室の影に呑まれていく。 金色の髪を透かし、頬に落ちる影は眩しい。 ガラスから染みだして来る春へと解けて行く冬の冷たさは、 その優美な曲線を描く頬に凛々しさを与えているようだった。 花火はその静寂を打ち砕かぬよう、 足音を潜めて彼女と向かい合わせになる椅子を引いた。 彼女は瞬きを一つし、ページをまた捲るだけで何も反応をしない。 だがそれが、自分を許容した証だと今ではわかる。 花火は本棚から持って来た古びた詩集を開き、 インクで綴られた文字に視線を落とす。 遠浅の海のような目が瞬きをする、その音が聞こえそうな沈黙が降り積もる。