めずらしい、その一言が胸中に零れた。 花火は息を潜め、床にそっと足を置いて歩いた。 黒い木の床を午後の間延びした日差しが白く切り取り、その上に木漏れ日が落ちている。 乱反射する眩しさの中、少女がテーブルに身を預けて目を閉じていた。 花と土の匂いがする春の風が、頬にかかる金色の髪を揺らし、 睫はさざめく木の葉の陰にちらちらと煌めいた。 穏やかな寝息がその細い背中を上下させる。 投げ出された右手の先には、開かれたままの本がある。 他の同級生の前でも、少しでいいからこうしてくつろいだ姿を見せればいいのに。 そんなことを髪を耳にかける手の裏で思いながら、 花火は葉擦りの音を降らせる豊かな菩提樹を見上げた。 真っ白い太陽が透き通る青空を、頭上に広げていた。