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「何の意味がある。」
 声に温度があるのなら、それは確かに4℃だった。
 頭の上から冷徹を被せ、二つの腕が後ろから首に巻き付いた。薔薇の香りが頬を掠める。熱すら伝わる
距離で息は耳にかかり、彼女の指はエリカの胸元を滑った。胸の上、親指が十字架を繋ぐ鎖にかかる。
「なにがですか?」
 本当は聞き返す必要なんてなかった。彼女が時折自分に向ける問いかけの源泉をエリカはわかっていた
から、本当は彼女は問う言葉すら必要ない。
 外は雪だ。
 彼女の手袋に、溶け残った氷の欠片が一つ付いている。
「今日、来る途中で物乞いを見た。片腕のない汚いジジイだった。」
 細い鎖は白い指に巻き取られ、首筋が痛む程引っ張られていた。それはエリカが生まれるより前から、
どの街でもある光景だった。そして、欧州大戦を機に、増えた姿だった。真冬の地面に膝をつき、小さな
入れ物を空へ向けている。
「インゲン豆が嫌いで、いつも残すんですよ。
 片手で、器用ですよね。」
 鎖がぴんと張ったまま止まった。エリカはその手の甲に、自分の手を添えて目蓋を下ろす。
「私、そんなに強くないですから。
 だから大丈夫ですよ、ロベリアさん。」