小銭の山がコクリコの前にある。カフェでラムのプレートを頼んで、紅茶とミルフィーユを食べてもま
だあまる金額の山だ。こんなことなら、もっと大きなお金を単位に始めればよかったかなと、コクリコの
胸の中にも居る一匹の悪魔が言う。それを天使がいやいや欲を出したらきっと失敗していたよと反論する
と、二人は手を取って『これでよし!』とコクリコに向かって親指を突き立てた。だからコクリコも、こ
れでよしということにして、手札をテーブルに広げた。
 瞬間、ロベリアの顔面が真っ白を通り越して土気色になった。
「ああ!?」
 女性が出してはならない濁った声を上げて、ロベリアは目の前のトランプを三秒凝視した。そして、猛
然とテーブルに額を打ち付けた。
「な・・・、なんだって、こんな・・・。」
 巴里の悪魔の断末魔を聞きながら、コクリコはテーブルの金をかき集めると、全てポケットへとねじ込
んでさっと席を立った。そして、一枚のトランプをロベリアに投げる。
「ロベリアのイカサマは古すぎるんだよ。
 ざんねんでした!」
 悪魔の手の中で、ジョーカーのカードが燃え尽きる。