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汗が音を立てる勢いで、ばたばたと化粧台に落ちた。
照明の調子が悪いと前もって聞かされていたが、スポットライトも集中すればそれは凄まじい熱線だった。
「うわぁ、すごい汗じゃないですか!」
「もう照明には言ってある、そなたのレビュウでは大丈夫だ。」
ブルーアイは湿った手袋を脱ぎ捨てた。
化粧係から受け取ったタオルで首筋を拭い、素早く青いドレスを脱ぐ。
その脇を通って、楽屋からは白猫ダンサー達がこぞって出て行った。
「水、置いておくから。」
「ありがとう。」
支度を終えたタタミゼ・ジュンヌが水差しを化粧台の隅に置いた。
彼女の衣装はカナリを基調にした華やかなドレスだ。
肩口は三角に膨らみ、腰まではすっきりと細いラインを描いている。
切り返しからスカートはパニエで大きく膨らみ、中に履いたスカートは淡い黄色で揃えられ、
その上を流れる四段に作られた腰から続くレースを美しく見せている。
爪先の細いハイヒールのブーツも彼女によく似合っていた。
「よく似合っているな。」
振り返ると、気遣わしげな目と視線があった。
今、行われているサフィールのレビュウはそう時を置かずに終わる。
続くエリカのレビュウの後にはすぐ、
タタミゼ・ジュンヌとブルーアイがふたりで行う先週始まったばかりの新レビュウの幕があく。
普段は着替えるだけで済むことだが、今回ばかりは化粧も直さないとならないだろう。
言葉を交わす間にも彼女は背も腹も汗を拭い終えて、衣装の袖に手を通そうというところだった。
「エリカ、行ってきまーす!」
黒猫が両手をあげて威風堂々言い放った。
「ああ、練習したあれ、しっかりな!」
「エリカさんがんばって。」
ブルーアイ、タタミゼ・ジュンヌが口々に言い、衣装係やバックダンサー達が掛ける声を引き連れて、
黒猫エリカは耳で風を切って走って行った。
ブルーアイはシュミーズのボタンを締め終わると、さっと化粧台の前に座った。
化粧箱を持ったブラウンの女性がその後ろに立つと、紙でブルーアイの顔に浮かんだ汗を手際よく拭って行く。
わずか静かになった楽屋まで、うっすらと舞台を包む歓声と拍手の作る怒濤が響いて来る。
ブルーアイは靴の中で、きゅっと足の指を丸めた。
不安と期待が入り交じった気持ち悪さを胸に抱えた自分を、
鏡の中から金髪碧眼の女性が晴れやかな表情で見つめ返していた。